北緯42度98分、東経144度22分のホテル18階のバーから、西の方、日高山脈が海に出会うあたりに、今まさに沈もうとする太陽をながめている。この場所は、緯度から言うと、アメリカのオレゴン州の南端、ニューヨーク州、フランスのコルシカ島、ローマの北にあたる。経度からすれば、北極海、ロシアのノボシビルスク諸島、南のミクロネシアの東である。

11月末の午後3時半、西の空は赤く燃え、火炎の中心に灼熱の太陽があって、私がワイングラスをかたむけている間にもアポロンの神力は、橙赤の光を海に投じて、暮れなずむ紫紺の海を扇状に染め分ける。

やがて太陽は海中に沈するが、その後しばらくの間、空と海の間に、紅の細い帯が広がり、その紅いは溶融して淡黄色の空に置き変っていく。

2杯目のグラスを飲み終る頃には、対岸の襟裳の灯りと漁船の漁火がまたたく。透明な大気と晴天の多い釧路の晩秋の楽しみ方のひとつである。