災害因と災害との駆け引き

まず最大の災害因への対処が優先されるべきである。

東日本大震災の場合、それは原子力災害であった。

われわれが震災後3か月の、今年の6月半ばに行った全国世論調査(全国から日本全体の縮図となるように200地点を選び出し、各地点から15歳-79歳までの男女を住宅地図にもとづいて無作為に抽出。合計1200人に面接留置法でアンケート調査を実施した。)では、「東日本大震災の地震、津波、原子力災害のうち、最も深刻な被害を与えたのは何ですか」という質問を行った。

結果は、原子力災害という回答者が55.4%、津波が24.0%、地震が19.1%であった。ここから、われわれ日本人が、東日本大震災を、地震災害でも津波災害でもなく、原子力災害であると認識していることがはっきりと見てとれる。

もし、このような災害認識が妥当であるとするならば、東日本大震災の教訓を受けて、われわれが第1に注力すべきは地震対策ではなく、原子力発電所の安全対策であり、次に津波対策である。

それらの災害対策は独立のものと考えるべきだ。

われわれは、地震のマグニチュードだけに心を奪われすぎていないだろうか。

特に、海溝型の巨大地震においては、津波の被害が地震のそれを大きく上回ることが十分に予想されるだけでなく、日本の原子力発電所はすべてが海水を冷却水として用いるため海岸沿いに立地していることを考慮すると、この種の巨大地震では、原子力発電所の安全対策が第1で、次が、津波対策、最後が地震対策の順であることがわかる。

続く